兵庫県南部を襲った震度七の激震が『寝た子』を揺り起こす。九五年一月の阪神淡路大震災は六四三七人の尊い人命を奪った。被害総額は約十兆円。二五三二棟のマンションが「大破」「中破」「小破」「軽微」とさまざまな被害を受け、そのうち一一五棟が建て替えられている(東京カンディ調査)。大多数の彼災マンションは修復や補強で地震前の状態か、あるいはそれ以上に安全性は高まった。補修や補強の手堅く地味な「再生」はメディアの関心を呼びにくい。
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メディアと不動産、建設業界が熱いまなざしを注いだのは建て替えだ。未だかつて百棟を超えるマンションが、これほど集中的に建て替えられた例はない。震災バブル、建て替えブームが到来した。政府は、建て替えに対して戸当たり数百万円か見込まれる解体を公費で負担すると宣言。震災特例で補助金や特別融資、利子補給などの「誘導策」をズラリと並べた。建て替えで生活を再スタートさせた市民は大勢いる。が、その裏で二重ローンが生活を圧迫しているのも事実だ。建て替えは「復興」のシンボルとしてメディアが持ち上げる。不動産、建設業界に『建て替えは儲かる』という空気が満ちた。もっとも天災を待っていてもラチはあかない。そこで業界が目をつけたのが、建物の老朽化と住民の高齢化という「ふたつの老い」で自治力が弱まった団地だった。千里ニュータウンは、大阪の都心に近く、住宅の人気は高い不動産、建設業界には容積に余裕のある古い団地はご馳走と映った。業界の包囲網が千里に迫る。