それまで棟梁たち大工だけだった現場に、親方たち左官屋が作業に入るようになって、10時と3時のお茶の時間が急ににぎやかになった。冬は暖房、夏は冷房の室内でデスクワークをしているサラリーマンとちがって、夏は汗を流しながら、冬は寒さに身を縮めながら作業する職人には、10時と3時のお茶の時間は、しばし、のんびりできる時間だ。私たちも、その時間は、お茶とお茶菓子は切らさないように、夫婦でローテーションを組んでなるべく現場に行った。
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ある日、このお茶の時間に、1億円の宝くじが当たったら、どう使うかという話が出た。「1億円ていっても、我々庶民にや、実感ないやね。1000万円くらいだったら考えられるけど。そうだな、1000万円あったら、家でも建てるか」棟梁が言うと、親方も、「そうさな、人の家じゃなくて、自分の家をねえ。20坪くらいの小さな家でいいから、好きなようにつくってみたいね」